2002年3月14日木曜日

【業務内容】 FBナレッジ

 FBナレッジは、独立行政法人や国立大学法人、地方独立行政法人等において日常的に発生する人事労務をめぐる様々な問題解決のためのアドバイスをQ&A形式でご紹介する会員専用のナレッジデータベースです。

人事労務のコンサルティングを通して皆さまから寄せられた質問等をもとに、カテゴリーに分けて掲載いたしました。

それぞれの設問・回答に関連する労働判例の情報も掲載しています。


http://www.fourbrain.co.jp/info_fbknowledge/

【業務内容】 制度設計

●人事評価制度構築・改善コンサルティング
    評価制度構築・改善支援、必要な情報提供、
    マニュアルの作成、評価シート作成 など
●早期退職優遇制度導入コンサルティング
●アウトソーシング導入コンサルティング
●給与制度改訂コンサルティング
    基本給表の作成支援、各種手当の見直、
    人事評価の反映方策策定 など

【業務内容】 職員研修

知識やスキルを習得するだけではなく、現場での個々のパフォーマンス向上を実現するための研修、それがフォーブレーンの目指している研修です。

これまで蓄積された豊富な知識、情報及び経験を活かし、民間企業とは異なる国立大学法人の特殊性を前提として、実際に現場で起こり得る問題を想定したうえで構成した研修プログラムを提供します。

また、各地区で行う部課長等会議や係長研修、人事担当者研修など企画段階から講師派遣、実施までお手伝いいたします。

◆階層別コース

階層ごとに求められる知識・スキルの習得や、役割認識の醸成を図るためのスタンダードプログラムです。

仕事やビジネスマナーの基本を確実に習得し、かつ即戦力人材、自立型人材を育成する新任職員研修から、マネジメントの要素を細分化し、必要なスキルをケーススタディ、グループワークを通じて習得するマネジメント研修まで多彩なプログラムをご用意しています。



◆ビジネススキルコース

業種・職種・階層にかかわらず、「日常の仕事力」、「ビジネスセンス」を高める研修をテーマ別に幅広くご提供しています。

法人の職員として働くための「質」を高めるスキルを効果的に身につけられるプログラムをご用意しています。




【業務内容】 人事労務コンサルティング

「期間を定めて雇用している職員を雇い止めできるか」
「懲戒解雇の疑いのある職員から提出された辞職届を受け取らないことは可能か」
「職員組合から提案された協約案で締結しても問題ないか」

など、日常発生する法人特有の人事・労務問題について、法的視点のみならず、実務的な観点から解決をサポートいたします。

・人事労務相談
・訪問サポート
・法改正等人事労務情報提供
・FB REPORT

http://www.fourbrain.co.jp/consulting/


2002年3月13日水曜日

【裁判例情報】亜細亜大学非常勤講師雇用期間満了事件

亜細亜大学非常勤講師雇用期間満了事件(東京地裁昭和63年11月25日判決)

(事案の概要)
ヒンズー語の非常勤講師が21年にわたって雇用が継続されてきたにもかかわらず、(1)非常勤講師は大学から全面的拘束を受けないことを前提としている、(2)大学との結びつきの程度は選任教員と比べて著しく薄い、(3)非常勤講師の嘱託については大学の裁量によることを予定している、(4)非常勤講師の契約が反復更新されたからといって、期間の定めのない契約に転化したとか、期間の定めのない契約と異ならない状態で存在したことは認められない、として雇止めが有効とされた

(判決の要旨)
亜大における教員は、昭和44年4月1日施行された教員規定によれば、専任教員と非常勤講師に分かれ、専任教員には専任教授、専任助教授、専任講師及び専任助手が該当する。専任教員の採用に際しては相当厳しい資格条件が課されているが、非常勤講師の場合はそれに準じる教育・研究能力があると認められる者も採用することができる。
専任教員のうち教授、助教授、講師は、専門学術の研究及び教育に従事し大学の役職又は校務を担当することがあるのに対し、非常勤講師は、委嘱された科目について授業及び指導をするだけで大学の役職又は校務を担当することはない。また、専任教員は、定年の定めがあるほかは通常在職期間の定めはなく、前記教員規定17条では「他に本務をもたず、本学に教員として常勤できるものでなければならない。」とされているのに対し、非常勤講師は、あらかじめ期間を定めて嘱任し、引続き嘱任する場合を除き、その期間の満了によって雇用契約は終了するとされており、他に本務をもってはならないとの制約はない
原告は、昭和38年以来亜大において、1週間にコマ数の多い年で9コマ、少ない年で4コマの授業を毎年担当してきた。昭和58年度は1週間に6コマの授業を担当し、これを2日間で行っており、賃金は1コマにつき月2万2000円、1か月13万2000円であった。原告は、そのほか、東京大学教養学部教養学科でイギリス連邦論を、上智大学で英語を教えており、相当額の収入を得ていた。
被告は、原告に対し、原告を期間の定めなく雇用するとか、長期間継続して雇用するなどと言明したことはない。また、亜大のB教養部長は、昭和58年6月22日ころ、原告に対し、大学の方針で来年度から外国人の先生を採用しないことにしたので、来年度は原告を採用しない旨述べた。亜大としてはそのような方針を採ることにしていなかったが、Bは原告を傷つけないためその旨述べたのであった。
非常勤講師については、大学が教育上の配慮から適任者を求める必要がある。亜大では近時非常勤講師は240~250名いるが、そのうち4、50名は更新しないし、大学の都合で更新しなかった者もいる。また、非常勤講師で20年以上継続している者も数名いるが、外国人の非常勤講師では原告が最も勤続年数が長かった。
講義が恒常的に設置されていても、雇用期間の定めのある講師を雇用することは当然ありうることである。また、被告の原告に対する毎年の辞令交付は1年という期間を限定したもので、重要な更新手続に当るといえる。その交付が4月1日以降であったのは、毎年の金額が固定していない賃金額を記載する都合によるものであった。
そして、亜大においては、専任教員はその職務及び責任の面で全般的な拘束を受けその地位が期間の定めなく継続するのに対し、非常勤講師は限られた職務を本来短期間担当する地位にあり、大学から全般的な拘束を受けないことを前提としており、非常勤講師の賃金等の雇用条件も専任教員とは異なっている。仮に被告が原告との契約の更新を予定していた時期があったとしても、被告において非常勤講師につき期間を定めて雇用するという形態は、その限られた職務内容と責任を反映したもので、その嘱託に当っては大学が裁量に基づき適任者を選任することを予定したものであり、被告はいつでも適任者を選任することができるというべきであるし、被告が昭和59年以降原告との契約の更新を予定していたとは認められない。
また、非常勤講師の側から見ても、他に本務・兼務をもつことはさしつかえなく、他にも収入を得ることは十分可能である。原告の場合も、他大学の教員の仕事も担当して相当額の収入を得ており、かつ、その拘束の度合等からして被告との結び付きの程度は専任教員と比べると極めて薄いものであって、原告は、被告との雇用契約がそのような性質のものであることを十分に知り又は知り得たというべきである。
以上のような諸事情を考慮すると、原・被告間の雇用契約は、20回更新されて21年間にわたったものの、それが期間の定めのないものに転化したとは認められないし、また、期間の定めのない契約と異ならない状態で存在したとは認められず、期間満了後も雇用関係が継続するものと期待することに合理性があるとも認められない。したがって、被告の更新拒絶につき解雇に関する法理を類推して制約を加える必要があるとはいえない。 
以上の次第で、原・被告間の雇用契約は昭和59年3月31日をもって終了したものと認められる。

【裁判例情報】桜花学園短大非常勤講師雇止め事件

桜花学園短大非常勤講師雇止め事件(名古屋地裁平成15年2月18日判決)

(事案の概要)
非常勤講師として委嘱期間を明示した契約をしている原告らの雇止めには解雇権濫用の法理が適用されないとされた。

(判決の要旨)
本件短大の非常勤講師は、基本的に、委嘱された担当授業を行い、これに対する報酬を受け取る以外に格別の権利・義務のない存在であり、被告とそのほかの法律関係に立つものではないと認めるのが相当である。一般に非常勤講師の採用等には専任教員の場合より簡素化された手続きが採用されており、両者の立場に互換性がないことを前提としているとみられるのであって、非常勤講師の地位は、あくまで専任教員とは異なる、非常勤の補助的教員たる地位に留まるというのが相当であり、単に非常勤講師としての契約が長期間反復されたとしても、当該非常勤講師を常勤教員として取り扱う旨の明示の合意が認められたり、その旨の黙示の合意が成立したと看做せるなどの特段の事情がある場合を除き、当該非常勤講師の法的地位が、常勤の専任教員としての地位ないしこれに準じる地位に転化する余地はないと解するのが相当である。そして、大学での一般的な採用区分の違いや教員定員上の取扱いの差異も考慮すると、上記明示の合意が認められ、あるいは黙示の合意の成立が擬制されるというためには、その内容的当否や法的有効性はともかく、当該非常勤講師につき専任教員の採用手続きが実際に履践され、あるいは当該非常勤講師においてその手続きが履践されたと信ずべき相当の事情があることが必要であって、かかる場合に限って上記特段の事情が認められるというのが相当である。

以上に基づき本件の場合を検討するに、原告らについて専任教員としての採用手続きが履践された事実はなく、原告からその旨の希望が出された形跡も窺われないし、毎年の委嘱に当たっては、非常勤講師としての委嘱である旨や委嘱期間を明示した契約書が交わされていたのであるから、容易に上記特段の事情は認められず、本件契約が専任教員の雇用契約と同様の期限の定めのない契約に転化したとか、実質的にこれと同視すべき状況になったということはできない。また、原告らの期間満了後の委嘱継続についての期待が存したとしても、法的保護に値するものでないことは見易い道理である。したがって、本件契約は、解雇権濫用法理が適用ないし類推適用される性質のものでないというべきである。
原告らは、本件委嘱停止に整理解雇に関する法理ないし通常の解雇権濫用の法理が適用等されることを前提に、本件委嘱停止が整理解雇の4要件を具備せず、あるいは通常解雇としての合理性を欠くと主張するが、本件委嘱停止に解雇濫用法理の適用ないし類推適用があるとは認められず、原告らの主張は前提を欠くというべきである。そこで、狭義の解雇権濫用と区別される一般的な権利濫用について検討するに、原告らが非常勤の補助的教員たる地位を有するに過ぎず、委嘱の継続について合理的な期待を有しているとも認め難い点を考慮すれば、本件委嘱停止に当たり、一般的な権利濫用が成立するといえるためには、単に委嘱停止となった事実が存在しないとか、これが実体的手続的に合理性を欠くというだけでは足りないというべきであって、委嘱停止が特に不当な意図をもってなされたとか、違法な行為等により積極的かつ現実に作出した事実を根拠に委嘱停止が実行された等の特段の事情が必要であると解するのが相当である。この点につき、原告らは、人件費の削減や、教授らが原告らの音楽教育についての豊かな意見を嫌悪したことが本件委嘱停止の真の理由だと主張するが、経済的理由から非常勤講師の採否を決定したとしても、それだけでは不当とはいえないし、原告らが音楽教育につきどのような「豊かな意見」を有し、これに対し教授らがいついかなる形で嫌悪したというのか、原告らの主張は不明確で、客観的証拠はないから、その主張は直ちに採用できない。そして、以上の事情を総合しても、本件委嘱停止が一般的な権利濫用に該当するとは認められないから、原告らの本件労働関係の請求には理由がないといわなければならない。

【裁判例情報】安川電機八幡工場(パート解雇)事件

安川電機八幡工場(パート解雇)事件(福岡高裁平成14年9月18日決定)

(事案の概要) 
X1、X2はY社の「Dスタッフ」と呼ばれる短時間契約従業員として3か月の雇用期間を定めて雇用され、モーターに取り付ける検出器の調整取付けに従事していた。X1は14年間、X2は17年間、同様の契約が更新されてきた。X1らは平成13年6月20日頃、同月21日から同年9月20日までの契約更新手続を行った。 
平成13年6月27日頃、Y社はX1らに「パート退職願い」用紙を配布し、退職理由欄には「会社都合」と記入し、押印の上提出するよう指示した。同年7月25日、Y社は、X2を含む14名に対して同年6月25日に、X1を含む7名に対して同月26日に解雇予告をしていたとして、X1には7月26日、X2には7月25日をもって解雇する旨の意思表示をした。 
Y社の「Dスタッフ就業規則」には、「会社は、次の各号の1つに該当するときは、契約期間中といえども解雇する。5号 事業の縮小その他やむを得ない事由が発生したとき」(9条)、「前条の規程による解雇については、本人の責めに帰すべき事由を除き、30日前に本人に予告する」(10条)との規定があった。 X1らは、Y社のなした整理解雇の意思表示が、解雇予告義務に反し、解雇理由が存在せず解雇権濫用であり無効である等主張し、労働契約上の地位保全及び賃金仮払いの仮処分を申し立てた。1審はX1らの申立を却下した。 

(決定の要旨) 
<証拠略>によれば、平成13年6月25日、<Y社の課長Aは>X2を含む14名に対し、同年7月21日以降の契約をしない、解雇予告に遅れた5日分については補償する旨述べて解雇予告をし、同月26日、X1を含む7名にも同様の通告をしたことが認められる。ところで、<証拠略>によれば、平成13年6月27日ごろ、解雇予告をしたパートタイマー従業員全員に、「パート退職願い」用紙を配布して、これに記入・押印して提出するよう指示しており、「パート退職願い」用紙を配布したことをもって、上記通告が退職勧奨であって、解雇予告ではないとは認められない。 
期間の定めのある労働契約の場合は、民法628条により、原則として解除はできず、やむことを得ざる事由ある時に限り、期間内解除(ただし、労働基準法20、21条による予告が必要)ができるにとどまる。したがって、就業規則9条の解雇事由の解釈にあたっても、当該解雇が、3か月の雇用期間の中途でなされなければならないほどの、やむを得ない事由の発生が必要であるというべきである。Y社の業績は、本件解雇の半年ほど前から受注減により急速に悪化しており、景気回復の兆しもなかったものであって、人員削減の必要性が存したことは認められるが、本件解雇により解雇されたパートタイマー従業員は、合計31名であり、残りの雇用期間は約2か月、X1らの平均給与は月額12万円から14万5000円程度であったことやY社の企業規模などからすると、どんなに、Y社の業績悪化が急激であったとしても、労働契約締結からわずか5日後に、3か月間の契約期間の終了を待つことなく解雇しなければならないほどの予想外かつやむを得ない事態が発生したと認めるに足りる疎明資料はない。<中略>したがって、本件解雇は無効であるというべきである。 
X1らが14~17年間もの長期にわたって、3か月ずつの雇用期間を多数回にわたって更新してきたことからすれば、Y社がX1らとの間の労働契約を更新しなかったことについて、解雇に関する法規整が類推適用される余地があるというべきである。そこで、次にY社が本件解雇をした、即ち、X1らとの間の労働契約を終了させた理由が合理的であって、社会通念上相当なものとして是認することができるかどうかについて検討する。 
<認定事実によれば、本件においてはいわゆる整理解雇の4要件のうち、人員削減の必要性、解雇回避努力、手続の妥当性の3要件は満たされている。>
次に、被解雇者選定の妥当性について検討するに、<中略>X1は、<中略>無断欠勤や無断遅刻があり、これまでにも上司に注意をされたが是正されていなかったことが認められるから、<中略>Y社がX1を選定したことに違法は認められない。 しかし、X2については、<中略>Y社が主張するX2の勤務態度や協調性の問題点については、時期、態様等について具体的な主張がなく、これを疎明するに足りる客観的な資料や他の候補者との比較資料の提出もなく、さらに、Y社が、当初、X2に対して年齢とか勤務状況であると答え、その後も具体的な理由は明確にされていなかったこと<証拠略>に照らし、X2が選定されたことが妥当であると認めるに足りる疎明はないというほかない。したがって、X2については、仮の地位を定める仮処分についての被保全権利の存在が一応疎明されているというべきである。

【裁判例情報】神戸弘陵学園事件

神戸弘陵学園事件(最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決)

(事実の概要) 
Xは、昭和59年4月1日付けでYの社会科担当の教員(常勤講師)として採用され、その職務に従事していたが、Yは昭和60年3月18日にXに対し、XY間の雇用契約は同月31日をもって終了する旨の通知をした。 
昭和59年3月の採用面接の際に、Y理事長は、Xに対し、採用後の身分は常勤講師とし、契約期間が一応昭和59年4月1日から1年とすること及び1年間の勤務状態をみて再雇用するか否かの判定をすることなどにつき説明をするとともに、口頭で採用したい旨申出をした。同月、Xは、勤務時間、給料、担当すべき教科等につき大まかな説明を受けてこれを了承した上、採用申出を受諾した。 そして、同年5月中旬には、Xは、Yから求められるままに、同年4月7日ころに予めYより交付されていた「Xが昭和60年3月31日までの1年の期限付の常勤講師としてYに採用される旨の合意がXとYとの間に成立したこと及び右期限が満了したときは解雇予告その他何らの通知を要せず期限満了の日に当然退職の効果を生ずること」などが記載されている期限付職員契約書に自ら署名捺印していた。

(判旨の概要) 
使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。そして、試用期間付雇用契約の法的性質については、試用期聞中の労働者に対する処遇の実情や試用期間満了時の本採用手続の実態等に照らしてこれを判断するほかないところ、試用期間中の労働者が試用期間の付いていない労働者と同じ職場で同じ職務に従事し、使用者の取扱いにも格段変わったところはなく、また、試用期間満了時に再雇用(すなわち本採用)に関する契約書作成の手続が採られていないような場合には、他に特段の事情が認められない限り、これを解約権留保付雇用契約であると解するのが相当である。そして、解約権留保付雇用契約における解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に許されるものであって、通常の雇用契約における解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきであるが、試用期間付雇用契約が試用期間の満了により終了するためには、本採用の拒否すなわち留保解約権の行使が許される場合でなければならない

〈1年の期間の満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意がXとYとの間に成立しているなどの特段の事情の有無について〉 
原審は、Xは、昭和59年3月1日の第二回目の面接の際に、Yの理事長から、採用後の身分は常勤講師とし、契約期間は一応同年4月1日から1年とすること及び1年間の勤務状態を見て再雇用するか否かの判定をすることなどにつき説明を受けるとともに、口頭で、採用したい旨の申出を受け、同年3月5日、右申出を受諾した、と認定しており、契約期間につきYの理事長が「一応」という表現を用いたとしているのである。また、原審は、Xは、右第2回目の面接の際に、Yの理事長から「A校は断って、うちで30年でも40年でもがんばってくれ。」とか「公立の試験も受けないでうちへきてくれ。」とか言われた旨供述しているが、Yの理事長はXが教員としての適性を有することを期待し、契約を更新して末永く本校において教鞭をとることを望んでいたことが認められるから、1年の期限付契約を結んだことと右Yの理事長の発言とは矛盾するものではない、としている。原審はYの理事長がXの供述するとおりの発言をしたと認定しているのかどうかは必ずしも明らかではないが、もし右発言がされたのであるとすれば、Yの理事長は契約期間の1年を「一応」のものと述べたというのであり、右理事長が用いたと認定されている「再雇用」の文言も、厳格な法律的意味において、雇用契約を新たに締結しなければ期間の満了により契約が終了する趣旨で述べたものとは必ずしも断定しがたいのであって、1年の期間の満了により本件雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意がXとYとの間に成立していたとすることには相当の疑問が残るといわなければならない。 もっとも、原審の認定によれば、Xが署名捺印した期限付職員契約書には、Xが昭和60年3月30日までの1年の期限付の常勤講師としてYに採用される旨の合意がXとYとの間に成立したこと及び右期限が満了したときは解雇予告その他何らの通知を要せず期限満了の日に当然退職の効果を生ずることなどの記載がされているというのであり、右によれば、1年の期間の満了により本件雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意がXとYとの間に成立していたかの如くである。しかし、XがYから右期限付職員契約書の交付を受けたのは本件雇用契約が成立した後である昭和59年4月7日ころであり、これに署名捺印したのは同年5月中旬であるというのである。また、本件記録によれば、XがYに提出した右期限付職員契約書の第一条には、Yは学園の生徒数、職員数等の事情から昭和59年度に限り本契約職員を採用する必要がある旨記載されていることが窺われるところ、本校は昭和58年4月に開校されたというのであるから、昭和59年度は開校2年目で、生徒は1年次生と2年次生のみであり、昭和60年度になって1年次生から3年次生までが初めて揃う状況にあった。したがって、昭和59年度から昭和60年度にかけてはむしろ生徒数が増加する状況にあり、生徒数の事情から昭和59年度に限って期限付職員を採用する必要があったとは思われず、同様に職員についても生徒数の増加に伴い増員する必要こそあれ、職員数の事情から昭和59年度に限って期限付職員を採用する必要があったとは思われない。次に、本件記録によれば、右期限付職員契約書の第二条には、XはY学園勤務規定を遵守して誠実に勤務する旨の記載があることが窺われるが、昭和59年5月当時には右勤務規定はいまだ作成されていなかったことが窺われるのである。以上によれば、Xの提出した期限付職員契約書は、本件雇用契約の趣旨・内容を必ずしも適切に表現していないのではないかという疑問の余地がある。 更に、本件記録によれば、Xは昭和58年3月にB大学経済学部を卒業後、昭和59年3月にC大学社会学部通信教育課程を終了して、本校の教員に採用されたものであることが窺われるところ、このような場合には、短期間の就職よりも長期間の安定した就職を望むのがわが国の社会における一般的な傾向であるから、本件においてXが1年後の雇用の継続を期待することにはもっともな事情があったものと思われる。 
以上のとおりであるから、本件雇用契約締結の際に、1年の期間の満了により本件雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意がXとYとの間に成立しているなどの特段の事情が認められるとすることにはなお疑問が残るといわざるを得ず、このような疑問が残るのにかかわらず、本件雇用契約に付された1年の期間を契約の存続期間であるとし、本件雇用契約は右1年の期間の満了により終了したとした原判決は、雇用契約の期間の性質についての法令の解釈を誤り、審理不尽、理由不備の違法を犯したものといわざるを得ず、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。したがって、諭旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。 そして、本件においては、前記疑問を解消し、本件雇用契約を1年の存続期間付のものであると解すべき特段の事情が認められるかどうか、右特段の事情が認められないとして本件雇用契約を試用期間付雇用契約であり、その法的性質を解約権留保付雇用契約であると解することが相当であるかどうか、そのように解することが相当であるとして本件が留保解約権の行使が許される場合に当たるかどうかにつき、更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。

【裁判例情報】近畿システム管理事件

近畿システム管理事件(最高裁平成7年11月21日第三小法廷判決)

(事案の概要) 
Zは昭和57年にX会社に入社し、A労働組合の執行委員長であった。X会社は、昭和54年頃から定年(60歳)退職者について、内規に「X会社と本人の希望が一致した場合は引き続き一年間嘱託として雇用することができる」と定め、特段の欠格事由がない限り、事前に本人の希望を徴し、希望者を嘱託として再雇用してきた。しかし、X会社は、通勤費の過大請求やキセル乗車の疑いを理由にZを定年後に再雇用しなかった。Z、A労働組合及びA労働組合の上部組織Bは、これを不当労働行為であるとして、Y労働委員会に救済申立をした。X会社の不当労働行為に当たると判断したY労働委員会は、X会社に対し、Zを嘱託社員として再雇用することを命ずる内容の本件救済命令を発した。X会社は、Y労働委員会による本件救済命令について、取消の訴えを提訴した。

(判決の要旨) 
原審の適法に確定したところによれば、X会社は、本件救済手続きにおいては、嘱託再雇用はあくまでX会社の自由な裁量で行っているものと主張して、その期間が一年間と定めている旨の主張も、前記内規の存在の主張もせず、これを証拠として提出することもせず、本訴において初めてこれらの主張立証をしたというのである。右の経過に原審の適法に確定したその余の事実関係を加えて本件を考察すれば、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程にも所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するか、又は原判決を正解しないでこれを非難するものにすぎず、採用することができない。

(原判決の要旨) 
<X会社がZを再雇用しなかったことは不当労働行為に該当するか否かについて、>X会社は、組合との団交において、右事実<(Zの通勤費の過大請求及びキセル乗車に対する強い疑惑があること)>をZ不再雇用の理由として挙げておらず、本件救済手続において初めて主張したものであり、右事実は、通勤費の過大請求及びキセル乗車疑惑がZ不再雇用の理由として、後からこじつけたものではないかとの疑念を抱かせる。<中略>当時からZの不再雇用が不当労働行為であるとして労使間で大問題になっていたのであるから、X会社が、Zの不再雇用に正当な理由があると考えていながら、これを積極的に説明しないとは考え難いのであって、X会社の右主張は採用できない。他方、X会社において、Zが主導する組合の活動、特にBへの加入、BのX会社に対する団交要求等を嫌悪していたことは明らかであり、その他、1<X会社による不当労働行為意思を推認させる事実>、2<X会社はYのキセル乗車の疑いを持ったが、処分しなかったこと>認定の諸事情を総合すると、Zの不再雇用の理由は一にX会社がZ、A労働組合及びBの組合活動を嫌悪したことにあると認めるのが相当である。したがって、X会社がZを再雇用しなかったことは労働組合法七条一号、三号に該当する不当労働行為である。 <本件救済命令が必要な救済の限度を超えているか否かについて、>X会社は、嘱託再雇用期間は一年間であるが、本件救済命令は実質上一年間を超える再雇用を命じていることに帰するから不当である旨主張するところ、なるほどY労働委員会が、X会社に対し、Zを嘱託社員として取り扱うことを命ずる内容の本件救済命令を発した時期は、Zの定年後一年三か月以上経過していたことが認められる。 しかしながら、<中略>X会社は、本件救済手続きにおいては、嘱託再雇用はあくまでX会社の自由な裁量でなしているものと主張し、前記内規の存在を主張せず、これを証拠としても提出せず、まして、その期間が一年と定められている旨の主張もせず、本訴において始めてこれらの主張立証をしたことが認められ、右事実によれば、X会社の右主張は信義に反するものであり、そのことをひとまず置いても、Y労働委員会は、救済命令として、労働者個人に対する侵害に基づく個人的被害を救済するという観点からだけでなく、あわせて組合活動一般に対する侵害の面をも考慮し、このような侵害状態を除去、是正して法の所期する正常な集団的労使関係を回復確保するという観点から、必要、適切な措置を命ずることができるのであるから、本件救済命令が、右趣旨に鑑み、その裁量を逸脱、濫用したものと解することはできず、X会社の右主張は理由がない。

【裁判例情報】平安閣事件

平安閣事件(最高裁昭和62年10月16日第二小法廷判決)

(事案の概要) 
X1は昭和46年2月に、X2は昭和49年11月にそれぞれYに雇用された。X1がYに採用された際、労働契約書が作成されたことや、特段雇用期間についての説明や取り決めがされたことはなかった。 Yは、昭和55年頃からパートの従業員の雇用期間を1年と明記した労働契約書を取り交わすようになったが、その際、右期間が経過すれば当然に雇用契約が終了するものである等の特別な説明はなされず、X1らとしては従前と同様右期間の定めがあっても特段のことがない限り将来も引き続け働けるものと考えていた。 X1に関しては、昭和55年5月付けで、(1)同月から昭和56年5月までを雇用期間とする、(2)厨房係を業務とする、(3)始業時刻を9時、終業時刻を17時とする、(4)退職に関する事項は就業規則による、(5)Yの定める「臨時従業員及び嘱託」就業規則に従って誠実に勤務する等の条項のある労働契約書が取り交わされた。その後も同様の労働契約書が取り交わされている。 X2に関しても、昭和56年10月に同様の労働契約書を取り交わし、昭和57年5月付けで、今回の更新をもって最終とし再度の更新はしない旨の特約事項があるほかは前年と同様の労働契約書を取り交わした。 Yは、昭和58年4月にX1及びX2に対して、同年5月をもってパートの契約期間が満了するので、契約更新はしない旨の通告を行った。 X1及びX2は、Yに対して雇用関係が存在することの確認を請求した。

(判決の要旨) 
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、是認することができ、その過程に所論の違法はない。

(原判決の要旨) 
右認定の事実によると、本件雇用契約を期間の定めのない契約ないしはその定めのない契約に転化したものと解することはできないものの、実質においては、期間の定めは一応のものであって、いずれかから格別の意思表示がない限り当然更新さるべきものとの前提のもとに、雇用契約が存続、維持されてきたものというべきであるから、期間満了によって本件雇用契約を終了させるためには、雇止めの意思表示及び剰員を生ずる等従来の取扱いを変更して雇用契約を終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情の存することを要するものと解するのを相当とするところ、Yは、期間満了を主張するのみであって、X1らに対し雇止め(契約更新拒絶)の意思表示をしたことないしは右特段の事情の存することにつき何ら主張立証しない(右意思表示、特段の事情の存在を認めるに足りる的確な証拠もない。)から、Yの抗弁は理由がなく、X1らとY間の雇用契約はY主張の期間満了により終了することなく、なお存続しているものというべきである。

【裁判例情報】日立メディコ事件

日立メディコ事件(最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決)

(事案の概要) 
Xは、昭和45年12月1日から同月20日までの期間を定めてYの柏工場に臨時員として雇用され、同月21日以降、期間2ヶ月の労働契約が5回更新されてきたが、Yは不況に伴う業務上の都合を理由に、昭和46年10月21日以降の契約の更新を拒絶した。 
Y柏工場の臨時員制度は、景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で設けられたものであり、臨時員の採用に当たっては学科試験や技能試験等は行わず簡易な方法で採用を決定していた。 Yが昭和45年8月から12月までの間に採用した柏工場の臨時員90名のうち、昭和46年10月20日まで雇用関係が継続した者は、本工採用者を除けば、Xを含む14名である。 柏工場においては、臨時員に対し、一般的には前作業的要素の作業、単純な作業、精度がさほど重要視されていない作業に従事させる方針をとっており、Xも比較的簡易な作業に従事していた。 Yは、臨時員の契約更新に当たっては、更新期間の約1週間前に本人の意思を確認し、当初作成の労働契約書の「4雇用期間」欄に順次雇用期間を記入し、臨時員の印を押捺せしめていたものであり、XとYとの間の5回にわたる労働契約の更新は、いずれも期間満了の都度新たな契約を更新する旨を合意することによってされてきたものである。 なお、Yは雇止めをXら臨時員等に告知した際、柏工場の業績悪化等を説明した上で、希望者には就職先の斡旋をすることを告げたが、Xはそれを希望しなかった。

(判決の要旨) 
本件労働契約の期間の定めを民法90条に違反するものということはできず、また、5回にわたる契約の更新によって、本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、あるいはXとYとの間に期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできないというべきである。 

原判決は、本件雇止めの効力を判断するに当たって、次のとおり判示している。 
柏工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、Xとの間においても5回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によって雇止めするに当たっては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反または不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。 しかし、臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。 したがって、独立採算制が採られているYの柏工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかったとしても、それをもって不当、不合理であるということはできず、希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。 原判決の右判断は、本件労働契約に関する前示の事実関係の下において正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。 

そして、原審は、次のように認定判断している。 すなわち、Yにおいては柏工場を一つの事業部門として独立採算制をとっていたことが認められるから、同工場を経営上の単位として人員削減の要否を判断することが不合理とはいえず、本件雇止めが行われた昭和46年10月の時点において、柏工場における臨時員の雇止めを事業上やむを得ないとしたYの判断に合理性に欠ける点は見当たらず、右判断に基づきXに対してされた本件雇止めについては、当時のYのXに対する対応等を考慮に入れても、これを権利の濫用、信義則違反と断ずることができないし、また、当時の柏工場の状況は同工場の臨時員就業規則74条2項にいう「業務上の都合がある場合」に該当する。 右原審の認定判断も、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らしていずれも肯認することができ、その過程に所論の違法はない。

【裁判例情報】東芝柳町工場事件

東芝柳町工場事件(最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決)

(事案の概要) 
Xらは、Yに契約期間を2か月と記載してある臨時従業員としての労働契約書を取り交わした上で基幹臨時工として雇い入れられた者であるが、当該契約が5回ないし23回にわたって更新された後、YはXに雇止めの意思表示をした。 Yにおける基幹臨時工は、採用基準、給与体系、労働時間、適用される就業規則等において本工と異なる取扱いをされ、本工労働組合に加入し得ず、労働協約の適用もないが、その従事する仕事の種類、内容の点において本工と差異はない。基幹臨時工が2か月の期間満了によって雇止めされた事例はなく、自ら希望して退職するもののほか、そのほとんどが長期間にわたって継続雇用されている。Yの臨時従業員就業規則(臨就規)の年次有給休暇の規定は1年以上の雇用を予定しており、1年以上継続して雇用された臨時工は、試験を経て本工に登用することとなっているが、右試験で不合格となった者でも、相当数の者が引き続き雇用されている。 Xらの採用に際しては、Y側に長期継続雇用、本工への登用を期待させるような言動があり、Xらも期間の定めにかかわらず継続雇用されるものと信じて契約書を取り交わしたのであり、本工に登用されることを強く希望していたという事情があった。また、Xらとの契約更新に当たっては、必ずしも契約期間満了の都度直ちに新契約締結の手続がとられていたわけではなかった。

(判決の要旨) 
<原判決は、>本件各労働契約は、当事者双方ともいずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当であり、したがって、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各雇止めの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから、実質において解雇の意思表示にあたる、とするのであり、また、そうである以上、本件各雇止めの効力の判断に当たっては、その実質にかんがみ、解雇に関する法理を類推すべきであることが明らかであって、上記の事実関係のもとにおけるその認定判断は、正当として首肯することができ、その過程に所論の違法はない。 就業規則に解雇事由が明示されている場合には、解雇は就業規則の適用として行われるものであり、したがってその効力も右解雇事由の存否のいかんによって決せらるべきであるが、右事由に形式的に該当する場合でも、それを理由とする解雇が著しく苛酷にわたる等相当でないときは解雇権を行使することができないものと解すべきである。 本件臨時従業員就業規則8条はYにおける基幹臨時工の解雇事由を列記しており、そのうち同条3号は契約期間の満了を解雇事由として掲げているが、本件各労働契約が期間の終了毎に当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態にあったこと、Yにおける基幹臨時工の採用、雇止めの実態、その作業内容、Xらの採用時及びその後におけるXらに対するY側の言動等にかんがみるときは、本件労働契約においては、単に期間が満了したという理由だけではYにおいては雇止めを行わず、Xらもまたこれを期待、信頼し、このような相互関係のもとに労働契約関係が存続、維持されてきたものというべきである。そして、このような場合には、経済事情の変動により剰員を生じる等Yにおいて従来の取扱いを変更して右条項を発動してもやむを得ないと認められる特段の事情の存しないかぎり、期間満了を理由として雇止めをすることは、信義則上からも許されないものといわなければならない。しかるに、この点につきYはなんら主張立証するところがないのである。 もっとも、前記のように臨就規8条は、期間中における解雇事由を列記しているから、これらの事由に該当する場合には雇止めをすることも許されると言うべきであるが、この点につき原判決はYの主張する本件各雇止めの理由がこれらの事由に該当するものでないとしており、右判断はその適法に確定した事実関係に照らしていずれも相当というべきであって、その過程にも所論の違法はない。そうすると、YのしたXらに対する本件雇止めは臨就規第8条に基づく解雇としての効力を有するものではなく、これと同趣旨に出た原判決に所論の違法はない。

【裁判例情報】丸子警報機事件

丸子警報機事件(長野地裁上田支部平成8年3月15日判決)

(事案の概要) 
Y会社の就業規則には、従業員を「事務員」「作業員」「嘱託」「臨時傭員」の4種類に分ける旨の定めがあり、通常、会社内では、前二者を正社員、後二者を(狭義では「臨時傭員」のみ)を臨時社員と呼んでいる。平成6年1月1日現在の従業員数は155名であるが、うち110名が正社員(男性87名、女性23名)、45名が臨時社員(女性43名、男性2名(嘱託))である。 Xらは、いずれもYの女性臨時社員であり、いずれも原則として雇用期間2か月の雇用契約を更新するという形で継続して勤務している。Xらは、女性正社員と同じ組立ラインに配属され、同様の仕事に従事しており、その勤務時間も通常午前8時20分から午後5時までで、他の正社員と同じである(ただし、午後4時45分から15分間は残業扱い。)。勤務日数も正社員と同じであり、いわゆるQCサークル活動にも正社員とほぼ同様に参加している。Y社の賃金体系においては、正社員については基本給は原則的には年功序列となっている一方で、臨時職員については3ランクに分かれており、勤続年数10年以上(A)、勤続年数3年以上10年未満(B)、3年未満(C)となっている。 Xらは、Yが同一(価値)労働同一賃金の原則という公序良俗に反しているとして、損害賠償を求めた。

(判決の要旨)
〈同一(価値)労働同一賃金の原則について、これを明言する実定法の規定は存在しないとし、また、我が国の多くの企業において同一(価値)労働に単純に同一賃金を支払ってきたわけではないこと及び労働価値が同一であるか否かを客観性をもって評価判定することが著しく困難であることから、これに反する賃金格差が直ちに違法となるという意味での公序とみなすことはできないとした上で、〉 このように、同一(価値)労働同一賃金の原則は、労働関係を一般的に規律する法範として存在すると考えることはできないけれども、賃金格差が現に存在しその違法性が争われているときは、その違法性の判断に当たり、この原則の理念が考慮されないで良いというわけでは決してない。 けだし、労働基準法3条、4条のような差別禁止規定は、直接的には社会的身分や性による差別を禁止しているものではあるが、その根底には、およそ人はその労働に対し、等しく報われなければならないという均等待遇の理念が存在していると解される。それは言わば、人格の価値を平等と見る市民法の普遍的な原理と考えるべきものである。前記のような年齢給、生活給制度との整合性や労働の価値の判断の困難性から、労働基準法における明文の規定こそ見送られたものの、その草案の段階では、右の如き理念に基づき同一(価値)労働同一賃金の原則が掲げられていたことも惹起されなければならない。 
したがって、同一(価値)労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念は、賃金格差の違法性判断において、ひとつの重要な判断要素として考慮されるべきであって、その理念に反する賃金格差は、使用者に許された裁量の範囲を逸脱したものとして、公序良俗違反の違法を招来する場合があると言うべきである。 右の観点から、本件におけるXら女性臨時社員と正社員との賃金格差について検討する。 これまで述べた本件における状況、すなわち、Xらライン作業に従事する臨時社員と、同じライン作業に従事する女性正社員の業務とを比べると、従事する職種、作業の内容、勤務時間及び日数並びにいわゆるQCサークル活動への関与などすべてが同様であること、臨時社員の勤務年数も長い者では25年を超えており、長年働き続けるつもりで勤務しているという点でも女性正社員と何ら変わりがないこと、女性臨時社員の採用の際にも、その後の契約更新においても、少なくとも採用されるXらの側においては、自己の身分について明確な認識を持ち難い状況であったことなどにかんがみれば、Xら臨時社員の提供する労働内容は、その外形面においても、Yへの帰属意識という内面においても、Y会社の女性正社員と全く同一であると言える。したがって、正社員の賃金が前提事実記載のとおり年功序列によって上昇するのであれば、臨時社員においても正社員と同様ないしこれに準じた年功序列的な賃金の上昇を期待し、勤務年数を重ねるに従ってその期待からの不満を増大させるのも無理からぬところである。 このような場合、使用者たるYにおいては、一定年月以上勤務した臨時社員には正社員となる途を用意するか、あるいは臨時社員の地位はそのままとしても、同一労働に従事させる以上は正社員に準じた年功序列制の賃金体系を設ける必要があったと言うべきである。しかるに、Xらを臨時社員として採用したままこれを固定化し、2か月ごとの雇用期間の更新を形式的に繰り返すことにより、女性正社員との顕著な賃金格差を維持拡大しつつ長期間の雇用を継続したことは、前述した同一(価値)労働同一賃金の原則の根底にある均等待遇の理念に違反する格差であり、単に妥当性を欠くというにとどまらず公序良俗違反として違法となるものと言うべきである(なお、前提事実記載のとおり、臨時社員にもその勤続年数に応じその基本給ABCの3段階の区分が設けられていたが、その額の差はわずかで、かつ勤続10年以上は一律であることから、正社員の年功序列制に準ずるものとは到底言えない。)。 もっとも、均等待遇の理念も抽象的なものであって、均等に扱うための前提となる諸要素の判断に幅がある以上は、その幅の範囲内における待遇の差に使用者側の裁量も認めざるを得ないところである。したがって、本件においても、Xら臨時社員と女性正社員の賃金格差がすべて違法となるというものではない。前提要素として最も重要な労働内容が同一であること、一定期間以上勤務した臨時社員については年功という要素も正社員と同様に考慮すべきであること、その他本件に現れた一切の事情に加え、Yにおいて同一(価値)労働同一賃金の原則が公序ではないということのほか賃金格差を正当化する事情を何ら主張立証していないことも考慮すれば、Xらの賃金が、同じ勤続年数の女性正社員の8割以下となるときは、許容される賃金格差の範囲を明らかに越え、その限度においてYの裁量が公序良俗違反として違法となると判断すべきである。

【裁判例情報】有期労働契約

丸子警報機事件(長野地裁上田支部平成8年3月15日判決)
最も重要な労働内容が同一であること、一定期間以上勤務した臨時社員については年功という要素も正社員と同様に考慮すべきであること、その他本件に現れた一切の事情などから、女性臨時社員の賃金が、同じ勤続年数の女性正社員の8割以下となるときは、その限度において使用者の裁量が公序良俗違反になるとした。

東芝柳町工場事件(最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決)
各労働契約は、期間の終了ごとに当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態で存在しており、雇止めの意思表示は実質において解雇の意思表示に当たり、その効力の判断に当たっては解雇に関する法理を類推すべきものであるとした。

日立メディコ事件(最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決)
ある程度の継続が期待されている雇用関係においては、労働者を契約期間満了によって雇止めするに当たっては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用等に該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新された場合と同様となるとした。

平安閣事件(最高裁昭和62年10月16日第二小法廷判決)
有期雇用契約について、期間の定めは一応のものであっていずれかから格別の意思表示がない限り当然更新されるべきものとの前提のもとに、雇用契約が存続・維持されてきたものとして、期間満了によって本件雇用契約を終了させるためには、雇止めの意思表示及び従来の取扱いを変更して雇用契約を終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情の存することが必要とした。

近畿システム管理事件(最高裁平成7年11月21日第三小法廷判決)
労働委員会は、労働者個人を救済する観点及び正常な集団的な労使関係を回復・確保する観点から必要・適切な措置を命ずることができることから、地方労働委員会による再雇用命令がその裁量を逸脱・濫用したものと解することはできないとした原審の判断を是認した。

神戸弘陵学園事件(最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決)
労働者の新規採用契約においてその適性を評価し、判断するために期間を設けた場合には、右期間の満了により右契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当であるとされた。

安川電機八幡工場(パート解雇)事件(福岡高裁平成14年9月18日決定)
有期契約労働者の契約期間中の解雇について、事業の縮小その他やむを得ない事由が発生したときは契約期間中といえども解雇する旨定めた就業規則の解釈にあたっては、解雇が雇用期間の中途でなされなければならないほどのやむを得ない事由の発生が必要であるというべきとした。

桜花学園短大非常勤講師雇止め事件(名古屋地裁平成15年2月18日判決)
非常勤講師として委嘱期間を明示した契約をしている原告らの雇止めには解雇権濫用の法理が適用されないとされた。

亜細亜大学非常勤講師雇用期間満了事件(東京地裁昭和63年11月25日判決)
非常勤講師が21年にわたる雇用期間が継続されてきたにもかかわらず、(1)非常勤講師は大学から全面的拘束を受けないことを前提としている、(2)大学との結びつきの程度は選任教員と比べて著しく薄い、(3)非常勤講師の嘱託については大学の裁量によることを予定している、(4)非常勤講師の契約が反復更新されたからといって、期間の定めのない契約に転化したとか、期間の定めのない契約と異ならない状態で存在したことは認められない、として雇止めが有効とされた。

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